レオナルド・ダ・ヴィンチ「モナ・リザ」(1503-1506年) 
Leonardo da Vinci"La Gioconda(The Mona Lisa)"
ルーブル美術館蔵

コローの「真珠の女」、ラファエロの「バルダッサーレ・カスティリオーネの肖像」と2点の肖像画を紹介した。ここでそのお手本も紹介したい。

おそらく世界でもっとも有名な絵画のひとつと思われるこの作品には鑑賞上の興味が尽きない。描かれたものの解釈だけでも実に多くのものがあるが、ここでは森村泰昌の例を紹介しよう。

氏のアプローチは「美術を着る」というものだ。文字通り絵を着てしまうのである。著書「踏みはずす美術史」(講談社現代新書,1998,ISBN4-06-149404-X C0271)には、「モナ・リザ」他いくつかの作品を「着る」試みが示されている。「モナ・リザ」においてはその表情や服装、諸説を分析し尽くし、妊婦姿、果てはその胎児にまでなってしまった。その結果から「アウトサイダーとインサイダーの力学」を見出している。物の理想を示すために様々なものを包含したことが、むしろその多様性を強調する結果になっていると解されており非常に興味深い。時代とともに解釈は変わる。レオナルドはこの解釈をどう思うだろうか。

森村のように、コローとラファエロも自分なりの「モナ・リザ」を描いたのだろう。それほどにこの作品は人の探究心を刺激する。

ところで、レオナルドには未完の作品が多い。この絵は1506年に完成したと言われているが、実際のところは未完ではないかと思いたい。というのも、理想の自然や人の持つ生死・性別・様々な感情・理想の容貌といったものをどれほど探求しようとも完全に解明できるものではないし、それがなされてしまったら生きる楽しみがなくなってしまうからである。予測がつくということは生物の生存にとって危険を回避するという意味で大切なことであるが、欲深き人間にとっては刺激も必要である。

余談だが、人が「美人」と思う顔は完全に左右対称なものよりも多少違う方なのだとか。完全に均整が取れているよりも、むしろそれが少々破られているほうが印象に残りやすいのだろう。(敬称略)

関連リンク

WebMuseum: Leonardo da Vinci: La Joconde
「モナ・リザ」の解説。
「モナ・リザ」
ルーブル美術館内の「モナ・リザ」の解説。
ルーブル美術館
ルーブル美術館のホームページ。

"La Gioconda(The Mona Lisa)",
1503-06,oil on wood,77x53 cm
Musée du Louvre, Paris.

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