16世紀末(正式には1648年)、スペインから独立したオランダは新教国であるために宗教画の需要は減少した。一方で豊かになった市民が新たな需要を生み出していく。画家も市民の多様な注文に得意な分野で応じていった。
フランス・ハルス(1580頃〜1666年)は動きのある筆使いによる生き生きとした描写で知られ、この「陽気な酒飲み」のほかにも「ジプシー娘」(ルーブル美術館)がある。
この絵でまず引きつけられるのはこの男の表情だろう。ピントの定まらない目、赤みのさした頬、ゆるんだ口。軽やかに描かれたヒゲに囲まれた口からはどんな冗談が飛び出すだろうかと期待せずにいられない。
画面の構成も、黒い帽子によって浮き上がった顔を頂点に、両手が画面をはみ出すほどの動きを持って描かれて躍動感を演出している。男の笑い声、こぼれそうなグラスから漂う酒の香り。眺めているだけで本当に楽しくなる絵である。
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The Merry Drinker,
oil on canvas,1628-30,81x66.5cm
Rijksmuseum at Amsterdam.
リンク
・アムステルダム国立博物館の紹介(オランダ政府観光局)