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藤城清治 「走馬燈」
(昇仙峡 影絵美術館蔵)


言葉では「思い出が走馬燈のように駆け巡る」などと使うが、実物を見たことはない。夏の夜に、縁先などに吊して楽しむのだそうだ。ろうそくの上昇気流でゆらゆらと影絵が回る姿はさぞ幻想的なことだろう。

さて、この作品では灯篭でなくメリーゴーラウンドになっている。夕暮れの空には一番星が輝き、馬の一頭には子供が乗っている。独特の大きな目は何を物語っているのだろうか。夢中になっているなら「早くおうちにお帰り」と声を掛けたいところだが、回っている状態の方が安定しているような印象さえ受ける。つまり始まりも終わりもない。ゆったりと時間が流れる中、音もなく永遠に回り続けるメリーゴーラウンド・・・。彼らが大きな木に守られるようにしていること、そしてそれらが水の中に浮かんでいることがより静寂な印象を与えている。浮島のすそが左右にすらりと伸びていることがちょっとした緊張感を与え、メリーゴーラウンドの回転を守る包容力を感じさせる。

最初に見た時は、そのすらりとした緊張感や静寂さの方が印象的だった。けれど、じっと見ているうちに、木に守られながら悠々と回り続ける馬や子供がなんだか不気味な存在に思えてきてしまった。
親に守られながら遊ぶのは子供の特権だ。誰しも持っている幼い頃の記憶・・・。子供でなくなった今、私には子供を見守れるだけの包容力があるだろうか。

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