きっと日の出の風景だろう。光の色からもそう思われるが、ルーベンスには日の入りよりも日の出のほうがよく似合う。
彼は晩年になって多くの風景画を残している。1635年、58歳のときにステーンの城と荘園の領主権を獲得したということだから、この絵もその頃楽しみながら描いたのかもしれない。
この絵が好きなのは、とにかく明るく前向きだからだ。昇る日の光はまばゆく、動物たちはのんびりと休んでいる。また、家や井戸は生活感を醸し出す。自然の美しさを感じる心と、人間への親しみを忘れていない。彼が亡くなったのは1640年だから、この絵も最晩年に描かれた部類に入ると思われる。彼とて一生のうちには様々な苦労があったことだろう。それにも関わらず最後まで気持ちの前向きな人だったのではないかと思う。
なお彼の死因は痛風。贅沢病で死ぬあたりも彼らしいのである。
"Landscape with a Watering Place",
oil on wood
Musée du Louvre, Paris.