この絵の第一印象はそれほど良くはなかった。「女は男に守られるもの」というジェンダーのようなものを感じたからである。
だが久しぶりにこの絵を見たときには、そのことは気にならなかった。考えてみれば当時にそんな発想はないのである。過去という別世界に対して現代の常識を振りかざすなど馬鹿げたことだ。社会的・文化的背景の違いを踏まえていれば、今回のような筋違いの印象を抱かなかったような気がする。
今この絵を見て思い浮かぶ言葉は「いたわりと信頼」。男は女を思い、優しく肩を抱き胸に手を当てる。女は男の手に手を添えている。抑制された表情の中にも信頼感がうかがえる。
ところで、この絵の表題は「ユダヤの花嫁」となっているが、これは通称である。旧約聖書に登場するイサクとリベカではないかと言われているのだが確証はない。また男が女の胸に手を当てるしぐさもなんらかの寓意があると思われるが不明だ。けれども、それらがわからなくてもこの二人が愛し合っているのは確かなのである。
金色と紅色の色使いも美しい。ゆったりとした気分の中で、人の心について様々なことを思い巡らせる時間を与えてくれる絵だ。
known as "The Jewish Bride(Isaac and
Rebecca)"
1667, oil on canvas,121.5 x 166.5 cm
Rijksmuseum,Amsterdam